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INFO:
しののおかげで、彼女と付き合うことになった。 お互いバイトもしてるし、大学がある日の方が会えたりするから空きコマで二人の時間を作ったりして。 今日はおれが三限からで、彼女は二限からって言ってたからもう来ているはずだけど、どこに居るんだろう。辺りをキョロキョロしながら彼女を探していると、カフェテラスに姿を見付けた。 『、』 声を掛けようと思って少し近付いたけど、しのが一緒に居る。二人は隣同士で座っていて、スマホの画面を一緒に見て笑っている。、、ちょっと距離近いな。 二人を見て立ち尽くしていると、顔を上げたしのと目が合った。 『あれ、将生』 「将生くん!おはよう」 しのの声に反応して顔を上げると、彼女は笑顔でおれを見た。嬉しそうに見えて可愛い。 『おはよう。何話してたの?』 「ん?これ、大輝の好きな動画見てたの。教えてもらってから私もはまっていて」 『あ、前に将生にも教えたやつ。将生あんまりはまってなかったけど』 結構前にしのに教えて貰って、おれはそこまで好きになれなかった動画。彼女は、気に入ったんだ。やっぱりしのと合うんだろうな、と考えて胸が痛くなった。 「将生くん、今日楽しみにしてるね」 今日は珍しくお互いバイトが休みだから、終わったらデートに行く約束をしている。彼女が見たいって言ってたプラネタリウムで、もうチケットも取ってある。 『うん。この後の講義終わったらまた連絡するね』 その後も連絡したら、学食に居るって言うから来たけどまたしのが一緒だ。いつもの事なのに、さっきのこともあって今日はやけに気になってしまう。 『将生お疲れ』 「あ、将生くん!」 何故か彼女の隣に横並びで座っていたしのが立ち上がって、こっち、とおれを彼女の隣に座らせた。 …今、なんで隣だったんだろ。 「大輝、もう次はボタンやってあげないからね」 携帯用の裁縫セットを片付けながら彼女はしのの方を見ている。しののシャツの袖に視線を移すと、ひとつだけボタンが違った。付けてあげたのかな。 『しの、ボタン取れたの?』 『うん。引っかかって、さっき取れて。』 「気を付けてよ」 何だろう。今までだっておれより一緒にいる時間が長い二人だから、こういう光景は日常的なのに。何故だかモヤモヤする。 『じゃあ俺行くから。二人とも、デート楽しめよ』 「ありがとう大輝、またね。」 優しい彼女は好きだけど、嫉妬でどうにかなりそうだった。しのにも彼女にもそんなつもりはないと思っているけど、二人の間にはどうしても入り込めない気がして。 「将生くん、」 『…おれのことは、なんで将生くん、なの?』 「、え」 『あ、いや。しののことは呼び捨てだから、何でかなって』 「…えっと、何で呼び捨てになったかはもう覚えてないけど、特別な理由とかは無いよ、?」 ああ、めちゃめちゃ困らせてる。わかってるのに、口が止まってくれない。 『しのと、あんまり近付きすぎないで欲しい』 「、、友達だよ?勿論知ってると思うけど、」 『頭くっつきそうなくらい近くで一緒にスマホ見てるのも、隣に座って服のボタン付けてあげてるのも、側から見たら友達の距離には見えないよ』 困らせて、俯いてしまっている。しのだったら、こんな顔はさせないよな。いつ見ても、二人で居る彼女は笑っているし。 「…ごめんなさい」 そんな顔をさせたくて言ってる訳じゃないのに。でも、結果的にはそうさせている。 自分でも、ちょっと心が狭すぎると思うけど抑えられなかった。 『、ごめん。顔上げて?怒ってないから、』 「…私、将生くんのことが好きだよ」 顔を上げると、不安そうな表情でおれを見つめる。 『知ってるよ。そう言ってくれたから、』 「大輝のことは一度もそんな風に思った事なくて、、でも将生くんには、まだ緊張しちゃう」 『、うん。…ごめん。おれが余裕無さすぎて、情けない』 置いた彼女の手に自分の手を重ねて、ぎゅっと握る。おれのせいでしのと距離を取って欲しい訳ではない。 『こんなこと言っちゃったけど、今まで通りで大丈夫だから。信じてるし、』 「、ん。でも将生くんが心配になることはあんまりしたくないから、話してくれてありがとう」 そう言って微笑んでくれる。こんな我儘なおれを許してくれるみたいに。 おれだって、二人のことを疑っていない。彼女は俺のことを好きだと言ってくれるし、それもわかっている。でも、じゃあなんでこんなにモヤモヤするんだ? 気付かないふりをしていた。核心に触れるのが怖くて聞いた事はなかったけど。 …多分、しのが彼女のことを好きなんだ。